家庭用のNASでRAIDのメリットデメリットをよく考える必要がある

一家に一台、たくさんの思い出を詰め込んでおけるNASがあるとは思いますが、皆さんのご家庭のNASはどうしていますか。RAIDが標準のような面があるので、おそらく多くのご家庭誤家庭でRAIDで稼働しているのではないのでしょうか。しかし、家庭用にRAIDは本当に必要なんでしょうか。我が家もSynology DS423+のSHRで稼働していますが、RAIDのメリットを改めて考えてみると、そこまでは必要ないんじゃないかという点と、RAIDのデメリットがお財布と家族の思い出などに直接ダメージという形で来るとなると、話は変わってきます。

RAIDはバックアップではない

これは大原則ですが、RAIDはバックアップではありません。人が誤って削除や移動してしまったデータや、上書きしてしまったデータを元に戻すことはできません。実際に私はRAIDの過信で多くのデータを失いました。RAIDしている領域に対して、誤ったデータコピーをしてしまい、失われてしまいました。
本来、RAIDはHDDを分散処理することによってアクセスを高速化したり、冗長化によって耐障害性を担保するものです。そしてこれらは、多くの場合企業に対して恩恵をもたらします。RAIDレベルによっても変わってくるのですが、方向性としてはそうであることが多いでしょう。

RAIDのメリット

メリットを紹介してしまえば、当然メリットに着眼点が行きます。無意識に我々はRAIDが優れていると認識してしまいますが、家庭用として考えると意外と盲点があります。そういうつもりでメリットを再度取り上げてみることにします。

RAIDは使えない時間(ダウンタイム)が少ない

冗長性を確保しないRAIDレベルは除き、共通している特徴として、ダウンタイムが少ないという点が挙げられます。つまり、業務の停止時間を最小化できるということです。企業では人件費というものが時間に応じてかかっていきますから、故障して使えない時間が増えると、その利用者数×故障時間という計算でコストが失われていきます。そのため使えない時間を最小限にすることは、RAIDの使命でもあるのです。

RAIDはHDDをまとめて単一の大容量ストレージにできる

RAIDはHDDをまとめて大容量にできることから、その時代で一番容量単価の安いものを選んで、見かけ上、容量単価の安い大容量ストレージを作ることができます。例えば現時点では8TBの容量単価が最安なので、これを2台買うことで、16TBを1台買うより安く済ませられます。冗長化を含めるとその限りではないのですが、抽象的にとらえればそういうメリットがあります。

そのメリットは、本当に家庭に必要か

そうなんです。家庭用に、ダウンタイムが少ないこと、単一ストレージとして大きなスペースが必要かというと、そんなこともない気がします。むしろ、RAIDによる冗長性確保によって台数が増えれば電気代も増えます。また、ダウンタイムが少なかろうと、アクセスできない時間があって何か致命的なダメージがあるかといえば、そんなこともなく、多くても10人いかないであろう家族を説得すればいいだけです。

単一の大容量ストレージも、2分割以上で保存するエリアが分かれたとしても問題ないでしょう。16TBすべてが同じフォルダに存在している必要はほぼないと思います。動画ファイルが合計で16TBになったとしても、撮影した年代で分けたり、映画なのか、ホームビデオなのか、アニメなのかなどのジャンルでいくらでも細分化可能です。これが8TBのストレージ2台にわたっていたとしても、家庭用として困ることはほぼないでしょう。

RAIDのデメリット

初期コストの高さ

HDDを複数買わないとスタートしない点で、これが分かりやすいデメリットの一つでしょう。確かに容量単価は下げられますが、結局冗長性のために何台か余計に買わなくてはなりませんし、ミラーリングの場合であれば容量単価も安いとは言い切れなくなってきます。

汎用性の低さ

例えば1台だけHDDを取り外してほかのPCにつなげたとしても、そのHDDではデータを読み取ることができません。RAIDの論理環境が崩壊した後に、1台だけでも助かってほしいと願ったとしても、それを回復することはほぼ不可能に近いです。1ファイルが数台にまたがって記録されます。ミラーリングであれば、このデメリットはないですが。

再構築のリスクと手間

これもミラーリングは無関係ですが、リビルトの時間は非常に緊張します。1台で障害が出た後、予備のHDDを控えているわけでもないでしょうから、そのHDDを購入して、届いて、交換して、リビルトしても、最後まで成功するのかどうかを見届けるまでは、安心できません。ストライピングの構造を持つすべてのRAIDレベルが対象となる非常に嫌なデメリットです。データが失われるのは、思い出が消えるのと同義のため、お金が無くなることよりつらいことになりえます。

非RAIDのメリット

これはRAIDのデメリットの逆になります。初期コストは台数が少ない分当然シンプルに安くなりますし、データもシンプルに書き込まれるため、1台ずつ取り外して別のPCにつなげたとしても、普通に読めます。再構築などもありません。1台がもし、復旧不可なレベルまでになったとしても、バックアップがありますし、それもダメだったとしても、無関係なHDDたちは守られます。データが全滅しないんです。これは家族の思い出を守っていくNASとして考えた時には非常にありがたい話です。写真が例えなくなっても、動画があれば!と思うこともできるでしょう。いや実際には嫌だけど、全滅よりは本当にましです。

RAIDをやめて再設計する

では、実際にRAIDをやめて再設計する場合の設計例を考えてみます。実際に我が家のデータ配分から、具体的に設計することにします。

分類容量(GB)
動画8727.42
ISO574.51
写真261.31
音楽55.61
ソフト28.14

こうやってみると、動画だけで8TBを超えているため、RAIDを使わないで一つの空間に入れようとすると、12TB以上のHDDが必要になってきます。せっかくRAIDをやめるので、RAIDのメリットである「単一で大きなデータ空間が用意できる」という要素に対しては、真っ向から向き合う必要があります。その対処法で一番簡単なのはデータの削減もそうですが、細分化が最もやりやすいでしょう。

単一の分類を細分化して2つ以上の空間に分ける

概要だけなので、ざっくりで再配置してみました。こうやってみると、パリティを廃止した分、保存容量として使えます。おかげで1台が丸々空いてしまいました。もっと高効率化すれば2台にまとめることができるでしょう。ここで「ある程度将来を予測して余裕を持った場所にデータを置いていく」という非RAIDを利用するうえでのデメリットが如実に出てきてしまいます。しかしそのデメリットも、家庭においては、日曜大工的にメンテナンスすればいい範囲でしょう。

当然ですが、冗長性がこの構成にはないことを認識しておく必要はあります。例えば6TB HDD2が故障した場合、バックアップなしにはこのディスク上のデータは復元することはできません。バックアップを空いた容量を使ってバックアップを2重にすることなどをしていけば同党の信頼性は確保できるでしょう。

まとめ

RAIDは法人利用とともに進化してきて今があります。メリットも、法人に向けたものである毛色が強いことが、今回わかりました。そして、家庭ではそのメリットが必要かどうか、改めて考え、シンプルにNASを設計していくことで、家族の思い出の全滅を防いでいくことが大事ではないかと気づきました。

今ディスク上にあるデータをどかす必要があるので、今すぐ取り掛かることはできませんが、近いうちにこの設計通りにディスクを構築しなおそうと思います。