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富士通 FMV Note Cを見て思うこと。これからの日系メーカーに期待すること。

ここ数年、パソコンが売れてないそうです。JEITA発表による数値を見ると、2022年度、2023年度が谷になっており、2024年度、まだ谷を抜け切れていないようにも見えますが、回復傾向にあるのかなということが見て取れます。

参考:JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)統計資料:パーソナルコンピュータ国内出荷実績
https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/pc

そろそろ2月も終わりに差し掛かり、これから大学生になられる方たちはきっとPCを買い始めたりする人もいるでしょう。それを受けて、3月は出荷台数が伸びてくると思います。そうなると前年を上回る出荷台数になりそうだなというところは、明るいニュースともいえそうです。

今回は、そんな冷え込んでいるPC市場でいまだに一線で戦う富士通が、渾身の一作を投入し、それがまた個人的に気になったので、紹介しつつ、思いをつづっていこうと思います。

目次

富士通 FMV Note Cとは

出典:https://www.fmworld.net/fmv/note_c/

今の若い世代がPCに求める要素を徹底的に調査して開発された、FMVブランドリニューアル施策後の1作目です。デザイン性に優れ、「パソコンを使用する時間をより良いものにするために」をテーマにしているそう。

私は、富士通のPCは今まで多くのものを触ってきましたが、富士通のPC系譜は、今までずっといいものばかりではなかったという風に思います。よかった時期、暗黒期、それぞれありました。例えば2018年ごろのモデルではちょうどトレンドがアイソレーションキーボードに入れ替わりつつあるころで、「堅牢だがキーボードがいまいち」のような製品がありました。今は、いいものを出し続けていると思います。反面、野心的な製品は、少なくなくなってきていると思います。2022年にはLOOXブランド復活などもありましたが。

今回は、野心的でいて、かつ、伝統を手堅く守った、いいとこどりのようなものが出てきました。ある意味、「なんで今までなかったの?」ぐらいの製品でもあるかなと思いました。

日本はもともとPCのメッカだった

日本にいれば、PCのメーカーといえば、まず最初のほうに思い浮かぶのが、富士通、NECあたりなんじゃないかなというところは、疑いの余地がないと思います。よくよく考えてみると、日本はかつて、PCメーカーが何社もひしめくメッカでした。国土に対して考えると異常ともいえるほど、PCメーカーが存在していたのです。

富士通、NEC、シャープ、パナソニック、東芝、日立、ソニー、ソーテック。ぱっと上げるだけでも、これだけの大手企業です。今はこの中で富士通、NEC、パナソニック、東芝、ソニーのみ。分社化や合弁などはさておき、そんなところです。90年代から2000年代にかけて、PCの低価格化が進み、外資系の台頭で国内PCメーカーは次第に姿を消していきました。

富士通の挑戦と努力

そんな淘汰の進んだPCメーカーの中で、富士通は今までも何度も挑戦を繰り返したPCメーカーです。LOOXシリーズはその特異なコンセプトからコアなファンを生み出しましたし、世界最軽量のモバイルノートは、ネジ一本一本まで重量管理するこだわり様。そのうえで必要十分な強度を満たすなど、執拗なまでの軽量化に対する情熱を持っていると感じます。

キーボードについても、全メーカーの中で随一のこだわりを持っています。高級キーボードの最高峰とも呼ばれるHappy Hacking Keyboardを生み出したのも富士通グループのPFUですし、リベルタッチという隠れた名作キーボードもかつて存在していました。

感覚的には「タブレットでいいじゃん。PCなんかいらないよ」みたいな空気さえ感じるこの日本で、何年も孤軍奮闘している姿を見れば、その努力や挑戦は本物であるだろうと想像に難くないです。つまり、売るための、売れるためのストーリーは後付けでもなんでもなく、すでにそろっています。これで売れないほうがおかしい。これで売れないのなら、何かが欠けているだけとしか思えません。

FMV Note Cはかけたパズルのピースを埋める存在となりえるか

たくさんのPCを今まで見てきましたが、例えばMacbookやSurfaceなどのプレミアムなモデルたちに共通していた特徴として、以下が挙げられます。

  • 値段が高い
  • ノイズのないデザイン
  • 使っていて小さな不満が少ない(あらゆる用途で)

これらを見ると特段とがっているわけでもありません。しかし決定的に「欠点」が見当たらないのです。

PCの使われ方、使い方というのは十人十色で、何に不満を覚えるのかも、ある意味十人十色になります。例えば個性的なデザイン(HPのSpectreシリーズなど)のモデルを購入したとしても、「そんな個性的なデザインのものを、みんなの前で使うのはちょっと気が引ける」「ビジネスの現場にふさわしくない」などという人もいると思います。かといって、無骨過ぎても、「なんかカフェで開くの恥ずかしいな…」とか、「ちょっと書類見たいけど、後にしよう。」学生に至っては、「友達にダサいPCだと思われたらいやだな」なんてことも起こります。

さらに言うと、昨日まで使っていた用途が、明日、急に変わったりするのがPCです。「今日は書類作成、明日からは動画編集なんかしたいな。」なんてことにもなりえるのです。

例えばコロナ禍においては、書類作成だけに使っていたPCが、急にWeb会議端末としての役目も持たされることになるなどがありました。その時に「このPC、カメラとマイク、ダメダメでさぁ~」なんて話が出てきたりすると、途端に魅力が落ちてしまったり、ブランドの失墜につながっていきます。

汎用性の高さゆえに、すべての用途に使われる可能性があるという点は、ほかの製品には見ない特徴かもしれません。裏を返せば、全方位でそれなりでないと、何かの拍子に減点要素を拾ってしまう可能性があるということです。今日まで準風満帆でも、明日は逆風が吹くかもしれない。PCとはそんな製品群なのです。

そこに、Note Cという回答を、富士通は今回持ってきたという格好になります。

全方位で、合格点をクリアしているように見えるNoteC

強豪ブランド立ちはだかるこの市場に、ようやく日系企業から肩を並べるべく製品が登場したことになるのですが、その競合ブランドたちに太刀打ちできる要素はどのようなものか。私は3つの要素が重要だと考えています。デザイン、性能、インターフェース。これらはあくまで人間が主観で感じ取る面が重要で、ベンチマークなど性能の数値などは正直どうでもいいものになります。

デザイン

かっこいいだけなら、今までもたくさんのものが出てきては、消えていきました。そんなことより重要なのは工作精度。例えばMacBookやSurfaceならパーツの合わせ目一つとっても、どこにも不自然さがありません。

すべてが一直線、均一。このような工作精度のPCは、私があまたのPCを見てきた中では、SurfaceとMacBookだけでした。工作精度に起因する、根底的な美しさこそが、真の「カッコよさ」を生み出す要素だと考えます。Note Cにも、その工作精度の高さが写真からうかがえます。

車などでは「チリがあっている」などと呼ばれる状態が、すべての角度から見て取れる

性能(に裏付けられる使用感)

これは正直一番どうでもいい話になりますが、「あらゆる動作で、もたつきがないこと」になります。わかりにくい。ベンチマークはその指標とほぼ同一にみることができますが、今の世の中で、CoreやRyzenを搭載しつつ、SSDをストレージに採用したPCが、もたつくシーンはほとんどないと考えていいでしょう。

ベンチマークされないものとして、筐体性能が意外と重要です。強度であったり、排熱であったりの部分です。ここはむしろ、富士通が長年、アピールもせずにこだわってきた部分であり、長く使うもの、何度も持ち運んでも、筐体がゆがまないことがテストされており、富士通製PCでこの部分が問題になるような製品を私は見たことがありません。

最近では、MIL規格準拠PCが増えてきましたが、それらが一般的になる前から独自の耐久性試験を重ねてきている富士通ですから、そこは心配する必要がないでしょう。

インターフェース

キーボード、タッチパッド、ディスプレイ、など、人と接する部分の話です。

しかし、富士通の神髄はキーボードにあります。このキーボードだけは、どのメーカーもそうそう太刀打ちできないほどには、よくできたキーボードが搭載されています。むしろキーボードなくして富士通のPCは語れないといえるほど、富士通はキーボードに並々ならぬ情熱(もとい開発費w)をかけているのが伝統です。このモデルも多分に漏れることはないでしょう。キーボードマイスターと呼ばれる方が社内にいることからも、それがうかがえます。

実機レビューしなくてもわかる魅力のある製品

この製品は、全方位で100点を狙わず、全方位で90点以上を満たすというアプローチで開発されていると感じました。どういった使われ方でも、不満になることがほぼない。そういう製品づくりをしていると思います。起動する前からその美しいデザインに惚れ、起動した後も素晴らしいインターフェースを不満なく、快適に使える。

ようやく、富士通が大きなアピールもせずに長年培ってきた「本物」としての価値が集大成として現れた、そんなノートPCが出てきたと思います。

もともと、日本の企業はその過剰ともいえる品質追及が得意です。こういった、過剰品質を追い求めていた企業が、その本質をユーザーに伝えるためにきちんと形にしてくるというケースが、今後も続いていけばきっと明るい未来もあるのではないかなと、そこまで考えてしまうようなノートPCです。

Note Cが、日本のノートPC復活ののろしとなることを、願ってやみません。

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この記事を書いた人

大手SIer出身。インフラエンジニア。ユーザー系企業で社内SEを2社ほど転々とし、今は個人事業主。
ハードウェアが大好きで、気になり始めると試さないと気が済まない性格のせいで一向にデバイスが減らない。

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