頑張っても頑張っても報われない。頑張っても給料は上がらないけど責任だけ重くなる。そんな経験をした方は結構いるんじゃないでしょうか。私もかつて、評価されずに転職を考えたことがありました。
毎日遅くまで残業して、いろいろな人の仕事に貢献し、自分の持っている得意分野で仕事仲間を助けたり。上司からは、「いつも頑張っているね。いてくれるから助かるよ」なんて言葉をかけられたりしながらも、評価は上がらない…。評価されていないのなら、必要とされてないんじゃないかとまで考え、転職を考え始める。
このようなことは今の日本では珍しくないのかもしれません。実際に、内閣官房の調査によると、人事評価に対して「納得している」と答えた人は、50%に満たないようです。

出典:内閣官房(https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/hyouka_kaizen/dai4/siryou3.pdf)
評価制度が世に広まり始めて約30年、そろそろうまく回り始めてもいいと思う頃ですが、それでも二人に一人が、人事評価に納得してない。私の経験ですが、人事評価に納得できないと、「会社にいていいのかな」とか、「必要とされてるんだろうか」とか、「経営陣には煙たいのかな」など、大きくはないけど、漠然としたネガティブ感情が沸き起こってくる原因になったりします。
今回は退職・転職を決意するであろう一つの要素、人事評価がなぜ伸びないのか、そしてそれがなぜ評価されないのか、評価されるにはどうしたらよいかを考えてみます。
人事評価が伸びない理由
そもそも昇給の原資が決まっている
これは頭の痛い話ですが、会社側に昇給させるための原資があることが前提です。会社は営利組織ですから、利益をきちんと出している必要があります。原資となる利益を増やすには、売り上げを伸ばし、コストを削減するという至極まっとうなことを、会社として実現している必要があります。しかし利益というものは、会社全体で創出するものです。自分の立場、職位、責任範囲でできる、利益を増価させる方法を考えて仕事に取り組むほかありません。
一人一人の行動の積み重ねが、会社の利益、ひいては昇給額を決めている

全社的に評価されていない
これもまた利益の話に近いものですが、会社ぐるみで高い評価を出さないようにしているというものです。評価規程がある場合は、評価規程がどのようになっているかを熟読しましょう。相対評価制度を採用している会社と、絶対評価制度を採用しているかにもよってきます。まずは評価としてのレギュレーションをきちんと頭に入れておくと、立ち回りにも役に立ちます。
評価規程を頭に入れておくことで運用がきちんと回っているかの確認をする
会社が求めている結果を定量的に出していない
例えば自分がやりたい仕事があって、そればっかりに集中していたりすると、会社が求める結果と乖離があると、成果が上がらないということになります。

目標はAにしましょう。



目標はAといわれたけど、Bが得意だし楽しいからBを実行しよう。
そして、そのまま行くと期末の面談ではこうなる。



Aについて評価します。



Aはあまり着手できませんでした。Bが忙しく、思うようにいきませんでした。でも、Bは頑張りました。
こうなってしまうと、評価者も評価の証拠が挙げにくく、最悪の場合評価が最低ランクになりかねません。この場合、最初からBについての目標を納得できる形で上司に提示する必要があったということになります。しかし会社というものはAを求めてきた場合、Aを実行するしかありません。これの解決法は後述します。
評価される目標が自分の行動とずれていないか確認
評価にかかわる人間に嫌われている
どちらも人間なので、評価する人からの心証が悪いと、ハンデを背負った状態になります。嫌われないようにしましょうとまでは言いませんが、嫌われると、いいところを見つけてもらいにくくなり不利になります。逆に嫌われていた場合、マイナスからのスタートという気持ちで、失うものがないつもりで前向きに取り組むといいと思います。
人事評価を伸ばすには
原因については、「そんなの当然だろう」というものばかりですが、ここからの解決策はやり方次第では大きく変わります。ここでは私が実際に評価を上げることができた行動の具体例を紹介します。
自分を売り込もう
自分の得意分野が一つでもあれば、それをできるだけ周りの人たちに説明していきましょう。あまり自慢げに話しすぎてもいけません。日常会話・業務会話の中で、自分が得意なことがあればそれについてできるだけ触れていきましょう。ここでおすすめの方法としては、他部署との交流をできるだけ増やすことです。評価者は、自分からのアピールよりも、それを裏付ける周辺者や、他部署の管理職からの評判に心を動かされやすいです。伝達者の信頼性効果(ウィンザー効果)とも呼ばれ、直接の情報よりも効果が高いことが研究でもわかっています。
評価者(自分の上司)以外の、第三者からの評価も高めよう
定量的に目標を定めよう
評価制度の浸透が未熟な組織では、定量的目標設定が明文化されていないケースが多いです。そこでライバルに差をつける方法として、「○○を15回達成する」、「××を5%向上する」などを目標に設定することで、第三者から見ても目標がクリアできたかどうかを確認できるような目標にします。
この目標で注意してほしいのは、ぎりぎりクリアできるあたりなどが良いでしょう。例えばすでに習慣化しているものがあれば、それをあえて目標に入れてしまうことで、その習慣を続けるだけで目標が達成できてしまいます。自分が習慣、当たり前と思っていることでも、他人からは非常にハードルの高い行為だったりすると、その効果は絶大です。
数値目標を、ぎりぎりクリアできるあたりに設定しよう
信頼を勝ち取ろう
これは普段の行動におけるものですが、時間を守らない、約束を守らない、期日を守らないというのは、強烈なデメリットになります。これらを確実にクリアしておくことは、言うまでもないでしょう。きちんと時間を守る人であれば、その評判は社内できちんと広まります。
「私はこれができるから、ほかができなくても大丈夫」そう思っているのは自分だけかもしれません。何を会社員として重要視するかは、それぞれの価値観によって変わってきます。その誰もが、見ても、恥ずかしくないような形にしておくイメージです。
基本的なことをバカにせずきちんとこなそう
委縮してはいけない
あまり、目標や評価に気を配りすぎて、委縮してしまうと日々の生活がストレスフルになってしまいます。ストレスフルな状態では、仕事でもアイデアがわきづらかったり、自分の持っている意見を勇気をもって伝えることが怖くなったりします。
自分の持てるパフォーマンスで、無理なくクリアできる目標設定にしていくことで、ストレスを小さくしつつも、楽しく充実した仕事ができるのであれば、評価というものは勝手についてきます。
自分の中の多少の余裕こそがいい仕事につながる


人事評価が社会人のすべてではない
ここまで、人事評価に対する対策方法を並べてみました。確かに人事評価の向上は、自身のQOL向上になりえる要素の一つです。でも今一度広い視野に立って、自身を見つめ直してもいいと思います。
会社で働くことは、確かに人生の大部分を占めますが、人生とは会社だけではありませんし、給料が幸せに直結しているかというとその限りでもない。
それ以上に、会社で得られる人間関係や、自分で学んだスキルや経験に、お金に代えがたい価値があることも事実です。会社というプラットフォームを生かしながら、自分の本当にやりたいことを片手間で学んでいくというのは、実は非常に効率のいい学習方法です。
会社にいるということは、人と毎日会話をすることでもあるのです。いろいろな人と会話して、受ける刺激も、会社にいるから得られる利益の一つです。
働きやすさはどうか
働きやすさとは、自分にとって居心地がいいかどうかで決めていいと思います。目標や規程などのある程度の会社のレギュレーションがあって、それを無理なく順守出来ていければ、労働におけるストレスは非常に少ないものとして考えられます。毎日、同じ時間に、同じ場所へ、通うことができるというのは実はものすごいことで、それができる職場は「働きやすい」と考えられるのではないでしょうか。
人間関係はどうか
人間関係ですが、日本労働調査組合のアンケート調査では、「職場の人間関係」と「評価・待遇に不満」が退職理由で同率1位になるほどで、人間関係がいい職場というのは希少であることがわかります。あらゆる機関で調査報告がされていますが、この傾向は大きく変わらず、人間関係について問題を抱えていない、もしくは自分にとっては問題がない職場というのは非常に貴重な存在です。もしあなたの職場で、人間関係に困っていないというのであれば、その貴重な場所にいることを再確認してみるのもいいと思います。
やりたいことができているか
最近は裁量が大きく与えられる会社というものも世の中ではウリになっているらしく、求人票を見ていても、「裁量が大きいです!」とか、「やりたいことを提案すれば任せてくれる社風!」とか書いてあったりします。
会社は利潤追求のための組織ですから、個人の思いを尊重してくれる余裕のある会社という意味でも、チャレンジ精神のある会社という意味でも、刺激にあふれた社会人生活が送れると思います。もし、今の職場で、やりたいことができているのであれば、人生というスケールを考えて自分が欲しい経験を得る場所として割り切った考え方もできると思います。
拘束時間は短いか
これはもう、会社の外での自分の人生の価値を高める考え方です。自由な時間は、お金にも勝る価値を持つこともあります。ゆったりとしている職場であれば、自分のペースで学習や仕事ができますし、定時で帰ることができるならいろいろなところに寄り道することもできます。家に帰れば、お金のかからない娯楽も今はたくさんあります。そちらを重要として考えれば、仮に評価が思わしくなかったとしても、自分のQOLは高められると思います。
また、副業を趣味の延長で始めるのも手です。どんなに副業やマイビジネスの挑戦をしたいと思っていても、本業が忙しすぎると当然難しくなっていきます。そのためにも、会社の外で自分の価値を創出する時間が与えられていると考えると、悪いことばかりではないと思います。


結論:人事評価はマーケティングに似ている
例えば、会社は自分という人材を給料というサブスクで労働というサービスを得ていると考えると、非常にわかりやすいと思います。
今は多種多様なサブスクが存在していますし、類似サービスも乱立しています。例えば動画配信サービスであれば、映画なら○○!オリジナルドラマなら○○!といったように、何か自分にブランディングできるものを探すのもよいでしょう。自分には当たり前にできて、ほかの人がなぜそれをできないのかわからないといったような自分にとって「当たり前」が、実は売り(強み)になっていたりします。会社の中で、○○のことならあの人!といわれるような、存在になったときは、おそらく人事評価も、居心地も、社会人生活も、充実したものになるのは間違いありません。
しかし、例えばその強みが、需要がないものだったりすると、やはり評価にはつながりにくい。サブスクのサービスも、需要が少ないものには契約者がつかないのと同じです。
今から強みを探そうとか、身に着けようと考えている方であれば、評価につながりやすいものを選んだうえで、強みに変えていくことも、効果的だと思います。
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